習志野市の部分公開・非公開処分、処分取消し、違法と答申
- narashinoombuds
- 2024年10月9日
- 読了時間: 6分
更新日:2024年11月18日
習志野市下水道課不正契約事件について、調査報告書などの情報公開請求を行っていた朝日新聞記者が、非公開範囲が広過ぎるとして審査請求をしていた件について、公開範囲の再検討を求める答申が出されたという報道がありました。
*公開範囲の再検討求める答申 習志野市不正発注で行政不服審査会 - 朝日新聞デジタル2024.10.3

情報公開請求で公開された調査報告書は、「事案の概要」「聞き取り結果に基づく事案の内容」など全体の3分の2以上は、項目ごとに全文が非公開だった。市は理由の一つとして、業者が被害者的な立場にあったと主張。情報を公開して業者が特定されれば「(業者の)社会的信用を低下させる」などとした。
これに対し審査会は「水増し請求自体が違法であることは明らか」とし、このような事実が開示されることによって「正当な利益が害されるおそれがあるということはできない」などと、市の主張を退けた。
この答申書は、総務省行政不服審査裁決・答申検索データベースで見ることができます。データベースの答申検索を選択し、検索画面のフリーワードに「習志野市」と入力して検索すると出てくるのですが、どれがどういう内容のものか一見して分かりにくく、一般市民にとって容易にアクセスしやすいものとは到底言えません。
このような答申は、たとえ検索する手段があったとしても、本来、市民の誰もがアクセスしやすく、簡単に見ることができるように、習志野市のホームページに掲載するなど、習志野市自ら公表するよう努めるものと考えますが、どうもそのような気はなさそうです。
本件答申について、ダウンロードしたものはコチラです。
また、オンブズ資料室の下水道課不正契約関連の項にもアップしています。
さて、本審査請求の答申の内容について簡単に触れたいと思います。
本件は、「習志野市が10月24日付で懲戒処分した、下水道課の不祥事に関する公文書のすべて(調査報告書や業者側との合意の見解、処分にかかわる人事審査会議事録など)」の開示請求に対する部分公開・非公開処分の取り消しを求める審査請求です。
争点は以下の3つです。
事業者情報
調査手法
通報者が特定されうる情報
<事業者情報について>
市は「業者が被害者的な立場にあり、これらの情報が公開されることによって業者が特定された場合には、当該業者の社会的信用を低下させる」と主張していました。
これに対し審査会は、「業者は別契約において水増し請求をしていたことは争いがなく、企業局下水道課職員から適法な手続きを経ずして業務を履行することを求められたとはいえ、当該求めに応じなかった場合の具体的不利益を示唆されて応じざるを得なかったとの事情も見当たらず、水増し請求自体が違法であることは明らか」とし、「仮に企業局下水道課職員の要請を断ることができなかったとして、業者が被害者であるとする場合でも、本来、企業局からの発注に応じて業務を履行した業者の名称は公開されるものであること、当該事業者が被害者的立場にあることを基礎付ける事情やその考え方を処分庁が市民に向けて説明することも可能で、当該業者の競争上の地位またはその他正当な利益が害されるおそれは未だ抽象的なものである」として、条例第8条2号アに該当しないとしました。
<調査手法について>
「公益通報があった場合には、一般的には関係者の聴取および関係書類の精査をすることが想定され、これらの調査を実施した具体的な対象を公開すると将来の調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることは否定し難いものの、このような調査を行ったこと自体を公開したとしても、将来の調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないもの」として、「通報者の特定に影響を及ぼすものを除いて、公開することができる部分がある」と示しました。
<通報者が特定され得る情報について>
請求人は、「内部通報者は不正を正すために内部通報をしたものであり、通報者の個人情報が特定されない範囲で不正内容を公表すべき」と主張しています。
審査会は、「本件各文書を見分したところ、公益通報者を特定させる情報が記載されているものの、通報者の特定に影響を及ぼすか否かという点を除いて考えれば、公開することができる部分がある」としました。
答申では、市(総務課・人事課)の行った部分公開・非公開処分について、違法であるとした上で、公益通報者の特定に影響を及ぼすか否か、当該業者の正当な利益を害するおそれがあることを基礎付ける事情の存在について、再度処分庁において検討・判断する機会を与えるべく、本件処分を取り消すに留めるとしています。
特に事業者名に対し、市は、
職員の要請に従わざるを得なかった被害者的な立場である。
業者名が特定されることにより、業者の社会的信用を低下させ、正当な利益を害するおそれがある。
業者に犯罪が成立するか否かにより結論を異にするものではない。
と主張しています。
それに対し、審査会は、
被害者的立場であるか否かは、審査会で判断することは困難である。
(現時点で審査会に顕出された事実関係では)業者が具体的不利益を示唆されて、職員の求めに応じざるを得なかった事情も見当たらない。
違法行為が行われたことは明らかであり、このような事実が開示されることによって、正当な利益が害されるおそれがあるということはできない。
本来、企業局からの発注に応じて業務を履行した業者の名称は公開されるものである。
(市の主張するように被害者的立場にあるのなら)適宜の方法によって、処分庁が市民に向けて説明することも可能である。
と、判断を示し、結果公開するなら、「当該業者が被害者的立場にあることを基礎付ける事情や考え方を適宜の方法で公にすることを検討されたい」と最後に付け加えています。
各争点のいずれも、習志野市情報公開条例に基づく市民の知る権利の保障と比較衡量しても、処分庁の主張は曖昧で蓋然性に欠けるとし、市民の知る権利を妨げ、処分庁の開示義務を免ずるに値する論拠が不足していると結論づけたと言えるでしょう。
習志野市情報公開条例では、その目的を、
第1条 この条例は、地方自治の本旨に基づいて、市民の知る権利を保障して、公文書の公開を請求する市民の権利につき定めることにより、市政運営の公開性の向上を図り、もつて市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに、市民による市政の監視及び参加の充実に資することを目的とする。
としています。
習志野市行政不服審査会は、条例の趣旨に沿った妥当な判断を行ったことに安堵を覚える一方で、習志野市の公正な裁決が待たれます。
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