ウォーターPPPが初めて市議会の質疑にあがる
- narashinoombuds
- 4月19日
- 読了時間: 8分
更新日:18 時間前
こんにちは、市民オンブズマン習志野事務局です。
先日、閉会した習志野市議会の令和7年第1回定例会(R7.3.4)において、ウォーターPPPについて、初めて質疑にあがりましたので、記録を兼ねての記事です。
ウォーターPPPとは、水道や下水道、工業用水道などの公共施設を対象とした官民連携方式で、
受託企業に運営権を設定(売却)し、受託企業は収受した利用料金等、自らの資金で管理運営・更新等を行うコンセッション方式(レベル4.0)
コンセッション方式に移行する前提で新設された管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)
の二つの方式を指す総称です。

今回、習志野市が導入を検討しているのは、管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)で、これは、運営権を受託企業に設定するコンセッション方式※1に移行する前提で新設されたものです。
※1 コンセッション方式とは、所有権は自治体に残したまま、運営権を民間事業者に売却し、民間事業者は施設の利用料金を得て自らの資金で運営・維持管理を行う方式。
この点について、国土交通省は、「下水道分野におけるウォーターPPP 管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)の考え方」や、「下水道分野における ウォーターPPPガイドライン 第1.1版」(現在2版作成中)において、「ウォーターPPPの概要」(内閣府資料)に記載される「レベル3.5(原則10年)の後、公共施設等運営事業(コンセッション方式)に移行」は、「レベル3.5の後継としてコンセッション方式(レベル4)を選択肢として検討いただきたいとの趣旨である」と、付け加えました。
(※上記画像は、内閣府が作成したもので、国土交通省資料でも使用しています。)
他に、下水道分野におけるウォーターPPP(主に管理・更新一体マネジメント方式)に関するQ&Aでは、コンセッション方式(レベル4)に移行しなかったとしてもペナルティが発生することは想定はしていないと回答しています。
しかし、「民で出来ることは民へ」と官業のあらゆる分野を市場化の対象とし、最終的な責任やリスク負担を官に残すコンセッション制度を導入、導入調査や資産情報整理に国費で補助金をつけ、導入自治体へは国費の重点配分を行い、首長へのトップセールス、自治体職員を集めて勉強会等を展開、それでも遅々として進まないPPP/PFI事業をなんとかして進めようと、コンセッションの前段階として運営権の設定や料金収受のない管理・更新一体マネジメント方式を新たに設定、しかしコンセッションに移行が前提であることがネックになったため、コンセッションへの「移行が前提」→「選択肢として検討いただきたい」と解釈追加、かつ国費支援についてPPP導入を要件とし、今や国費支援を必要とする自治体は、導入に向けて動かざるを得ない事態になっており、もはや自治体や住民にとってのニーズや良し悪しは関係なく、PPP/PFI事業の案件形成、実績拡大が最重要課題のようです。
また、PPP/PFI導入で施設の老朽化対策や自治体の財政負担軽減を図るんだと言っている裏で、新たなビジネス機会の創出と大企業を中心とする経済界の動きも活発で、制度や運用が、経済界の要望に応える形の内容に変遷しています。
これまでの経過を鑑みると、コンセッション方式は選択肢として検討さえすれば良かったのに、いつの間にか実行しなければならなくなっていたということは十分あり得そうですし、コンセッションを選択しなくてもペナルティが発生することは想定していないと言っても、今回のように補助金や交付金措置などを利用した、実質選択ができない促進策が行われても、なんら不思議はありません。
またコンセッション方式だけでなく、管理・更新一体マネジメント方式も、その内容や条件そのものが変わることも考えられ、自治体や住民にとって有利になるとは限りません。
とはいえ、習志野市が、市民・議員へ説明しなくて良いということにはなりません。
さて、議会の議事録がHPに掲載されるのは、もう少し先となりますので、質疑・答弁を要約して記録しておきます。
鴨議員:現在企業局で行っているマーケットサウンディング調査についての資料(P30)によると、令和9年度当初予算の(国からの)交付金等を受けるには、令和8年度(R9.3.31)までに要件充足が必要とあるが、企業局はすでに要件充足のために動いている?
御山工務部長:将来における導入を検討している段階で、現時点では未定。
鴨議員:国の補助金はウォーターPPPの導入の要件を満たさなければ、補助しないということ?
御山工務部長:(はい。)
※画面外のため確認できませんが、やりとりの様子からおそらく同様の回答があったと推定。
鴨議員:コンセッション方式の、運営権の設定だとか料金徴収だとか、(受託企業が料金を)徴収して計画して使うとかいう話だと、ただの委託だとかいう話ではなくなってくる。先行自治体では、市民からたくさんの疑問や不安視する声が出ている。民営化じゃないから良いということで済む話でもない。習志野市でも当然市民から疑問の声が上がってくるのでは?
鴨議員:国費支援の要件を満たすには、あと1年とちょっとしかない。今からでも議論すべきでは?議員だって市民に説明できない。企業局も情報を議会に示してほしい。
鴨議員:話は逸れるけど企業局のガス・水道・下水道徴収の業務委託契約状況について、R2年度までは2.5億程度で推移しているが、R3年度から毎年11億となっている。これはどういうこと?
渡辺業務部長:R3〜R8年度までの債務負担行為の総額(を毎年記載した)。1年あたりにすると2.3億となる。当該記載はわかりづらいため、今後記載方法を検討する。
鴨議員:この業務を請け負っているのはヴェオリア・ジェネッツ社。世界的水企業で、ウォーターPPPの内閣府にヴェオリア社の人たちが顧問か何かで入っている(※正確には内閣府の「民間資金等活用事業推進室」に政策調査員として2017年4月1日から2019年3月31日まで出向)。 参考:水道民営化促進で内閣府に出向した人の正体ー東洋経済オンライン2018/12/07 参考:2018年11月29日、厚生労働委員会で水道法改悪に利害関係人が関与していることについて追及 ー福島みずほ公式サイト2018/12/6
鴨議員:ウォーターPPPについては、いろんな議論と市民のコンセンサスを得ていくようにしなければならない。
※( )内は事務局補足
以下、鴨議員の質疑において、最後に、企業局管理者市川隆幸氏(当時)が行った答弁(2025.3.4)全文です。
今回、ウォーターPPPについて、ご心配、ご懸念ですか、いろいろいただきました。今回ですね ウォーターPPPについては 内閣府の方の方針で効率的・戦略的に事業運営を進めるため推進してるということでご説明させていただきました。これについては県内でも、千葉・船橋・佐倉等ですね、我々と同様に、導入について現在検討しているという状況でございます。先ほどあったように国の国庫補助の関係もありますので、あの、進めなければならないというハードルはかなりあると思うんですけど、ウォーターPPPについては、人口減少社会における施設の維持管理更新事業を合理的効果的に実施していくための取り組みでございます。この辺はですね、あくまでも維持管理・更新に特化した事業でございます。運営や経営に関する権利については、行政か我々の企業局に残したままのものでありますから、民営化には結びつかないということに、というルールになります。ただそれについては、民の方々がどういう形で我々のウォーターPPPの提案をしていただけるかということは、これから今回のサウンディング調査の中でいろいろご検討いただいて、意見いただく場面が出てくると思うんです。それについて、市民の皆様にこれからですね、ご心配を頂かないような説明をしていかなくちゃいけないと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。以上です。
ー習志野市議会 議会中継-2025.3.4 ※1:18:15頃
現在なぜか削除されている「習志野市下水道施設等へのウォーターPPP導入検討に係るマーケットサウンディング調査」の事業者向け資料には、
今後の汚水管改築更新の必要性及び維持管理業務量の増大に鑑み、ウォーターPPPの導入が必要である。
当面は、管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)を採用し、10年後に後継としてコンセッション方式(レベル4)を選択肢として検討することが現実的と考えられる。
と、議会にも住民にも示されていない習志野市の方針が示されています。
*
令和7年2月に、第1回目のマーケットサウンディング調査が行われ、3月に初めて市議会で質疑に上り、3月末には、第1回目の調査のページが削除されていることが確認されており、現在は、調査が行われたこと自体、市民には分からない状況です。
上記事業者向け資料には、今年度(令和7年度)に第2回の調査が行われ、来年度(令和8年度)には、募集公告と契約締結が予定スケジュールとして記載されており、このスケジュール通りに進めないと、令和9年度の当初予算の交付金等の交付に間に合わないということになります。

募集公告まで、あと1年です。