習志野文化ホール収支はどれくらい?
- narashinoombuds
- 8月25日
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更新日:8月26日
こんにちは、市民オンブズマン習志野事務局です。
先日の市長News(25.7/3(木)配信:JR津田沼駅南口・再開発の現状)で、「なぜ、JR津田沼駅南口に再建設なのか」について、市長は、
結論から言えばJR津田沼駅は 千葉県内でも有数の交通の要所であり、本市最大の商業エリアでもあることから、市内外・広範囲からの集客によってホールの稼働率が安定することなど、期待できるメリットがかなり大きいことに加え、文教住宅都市のシンボルとしての意義などを総合的に勘案して決定したものです。 他の場所への移転も検討いたしましたけども、建設当初のコストは安いです。しかし維持運営経費分を賄えるかどうかが不確実です。公共施設ですので利益は追求できませんが、かと言って赤字の運営はできません。なぜならば、その赤字の補填は皆さんから納められた税金を充てるからです。そして将来世代に過度な負担を先送りするわけにはいかないからです。 習志野文化ホールは開業以来、まちの賑いの中心部で音楽を中心とする文化芸術活動で来場する全ての方を豊かにしてきました。これを市と利用者で分かち合いながら健全に運営されてきました。こうした諸々を総合的に勘案しますと、同じ場所に再建設することが望ましいと今も確信しています。
と説明しています。
他の場所とは、平成30年度に行われた「文化ホール及び類似施設調査」で敷地候補地の比較対象だった、旧庁舎跡地※1のことだと思われます。
※1 当時、旧庁舎跡地で建設した場合は約79億円、JR津田沼駅南口で再建設した場合は約117億円と概算されており、その差は38億円。
さて、市長の説明にある、他の場所への移転は、
建設当初のコストは安いものの、
維持運営経費分を賄えるか不確実で、
赤字運営はできない
とのことですが、習志野文化ホールはもともと赤字運営の不採算事業です。
それとも、少しでも財政支出を減らすには、ということでしょうか。

では、習志野文化ホールの収支はどのようなものだったのでしょうか?
習志野文化ホールに係る経費について、まとまった資料は見当たらなかったので、市の所有となった平成27年以降の各年の決算から抽出してまとめたのが下記の表です。

一番上が、市に入ってくる使用料等の収入から、市が負担している支出を引いた、実質収支です。平均すると約1億8千万円の赤字(税負担)です。
※市の所有になる前も、確認できる範囲内では、上記赤字額と比べるとやや多い程度の助成金・補助金があったので、税金の支出という面で、ほぼ同じと考えてよさそうです。
※文化ホールは自主事業等、使用料収入以外の事業を行っていますが、収入額は、確認できるもので約1,000万〜2,000万円程度です。確認できる資料の期間が限定的で内訳不明のため、計上外としました。
市長の説明にある維持運営経費分が、償還金(過去の大規模改修工事の返済分)や大規模改修費、補助金を除いた額ということで話されているとすると、一番下に【参考】で入れてある数字で、平均で約6,000万円の赤字(税負担)ということになりす。

また、施設の稼働状況については、平成24年以降で、長期休館のあった平成30年、令和2年、3年を除いた年に限定してみると平均で約18万7千人の利用がありますが、なんだか全体として減ってきているように見えます。
(市民ホールも、プラッツ開業後、徐々に盛り返しているようですが、だいぶ減ってますね・・・)


文化ホールは公共施設なので、税金で運営されるものですが、仮に、他に比べれば高い稼働率が期待でき、収入が増えれば赤字幅(税負担)を減らせる期待ができる、という話であれば、文化ホールはすでに赤字で、他の場所に限って赤字なわけではないですから、ややミスリードのような気がしますし、何か他に、赤字を脱却し、採算が取れるような策があるのかもしれません。
習志野文化ホールは、財団法人習志野文化ホールが建設・管理運営を行う第三セクター方式で開館し、平成27年に、後身の公益財団習志野文化ホールから、寄付という形で市の所有になっています。
これまでも度々改修は行ってきたものの、さらに大規模改修工事の必要が生じ、その費用※2が工面できませんでした。すでに多額の借金もあり債務超過の恐れがあったため、「財団による維持が困難」として負債も含めて※3市に移管されたという経過があります。
※2 この時の大規模改修工事の見込み額は14億5千万円。
※3 当時、資産(6億5,500万円)、負債(6億6,500万円)で負債の方が多い状態だったそうです。
昭和53年の習志野文化ホールの建設費は、本体と舞台、備品等含め、合計で約26億4,000万円で、その内訳は、
習志野文化ホール財団/開発銀行から借入・・・約11億8,000万円
習志野市・・・14億5,000万円
その他市民からの寄付等
でした。
昭和50年の議事録に、
大型プロジェクトの中で第3セクターでなければいわゆる融資をしない政府機関があるわけです。そうなった場合には、やはり財団なりそういう法人組織というものがいまの時流の中で生かされる道はございますので、先ほど言いました文化ホールの建設の問題にいたしましても、そういう手法を講じなければ今後において文化ホールの建設はできないと、こういう結果になろうと思いますので、その辺は政府の施策と私どものいわゆる経営上の諸点を十分に考えながら処理をしていきたいというふうに思います。(昭和50年12月16日吉野市長答弁)
という言及があり、第3セクター方式をとったのは、あくまで融資を受けるためであって、
なお 、銀行から融資を受けたお金については以降、市として補助金という形で補填していく方法で返済してきました。(先述の市長Newsより)
というように、借入れの返済やホールの使用料収入で足りなかった分は補助金で補填する運営を行ってきました。
第3セクターは、
第三セクター等は、地方公共団体から独立した事業主体として自らの責任で事業を遂行する法人であり、第三セクター等の経営責任は経営者に帰するものである。(第三セクター等の経営健全化等に関する指針/総務省)
ですが、是非はともかくとしても、文化ホールは行政の助成がなければ成立しない運営形態をとっていました。むしろ、行政に代位して公益事業としての文化ホールの建設・運営を行っているというような認識で支えられてきたであろうことは議事録等からもうかがえます。
官民共同出資の第三セクター方式とは言っても、市がつくった民で、民の借入分の返済は市が税金で補填し、実質、公共施設同然の扱いだった、というような感じでしょうか。
それにしても、国が補助金を出したり融資を行うにあたり、要件をつけて自治体の意思決定に影響を及ぼすようなやり方をするのは、今も昔もかわらないですね。
現在検討されている下水道のウォーターPPPも同じです。
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文化ホールへの助成費は、
文化ホール運営に係る経費と、大規模改修工事費並びに復旧工事費の償還元金及び利子に係る経費(平成27年一般会計決算特別委員会H27.10.9)
と説明されています。
市へ移管される前、文化ホールの決算収入額に対して補助率はおよそ60%だったそうで、過去、文化ホールに行ってきた補助の総額は約87億円にのぼるそうです。
(ちなみに市に移管された後の9年間は、総額22億円の支出、赤字(税支出)は累積で16億円となっています。)
市に移管後は、サービス低下を避けるためと使用料金は据え置いており、稼働日数を月2回ほど多く増やす対応を行ったそうですが、減免制度等を廃止した代わりに補助金を出していたり、指定管理者は公益財団法人習志野文化ホールで今まで通り、と実質的にはほとんど変わっていない様子です。
ちなみに、
文化ホールは休館を伴う大規模改修工事を控えていることから、当面は利用料金制度を導入せず、その運営費は全て設置者である習志野市からの指定管理料で賄うこととしておりますが、今後は工事の進捗状況を見ながら利用料金制度を適用する予定(平成28年3月2日市議会定例会:植松教育長)
とのことで、いずれ、使用料も財団が受け取ることになるのでしょうが、使用料が市の歳入に入らず、別途、一定の指定管理料も発生するとなれば、維持運営経費を賄えるかどうかという話でもなくなってくるようにも思います。
これはこれで、どのような契約・リスク分担となるのか、チェックが必要ですね。
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さて、話は戻りますが、平成30年当時の調査(概算)で、その他候補地に建設した場合と(79億)、現在のJR津田沼駅南口に再建設した場合(117億)とで、38億円の差がありました。
令和7年の試算では、文化ホールの具体的な取得費を示す資料が見当たらなかったのですが、過去の試算の内容では、市の負担額の82〜84%程度を占めていましたので、そこから考えると、現在は160億円程度になっているのではないかと推察します。
その他候補地も、同じように高騰しているとしても、今やその差は相当程度に膨らんでいるかもしれません。
建設当初のコストが膨らめば膨らむほど、経常収支の優位性は下がってしまい、埋め難い差が広がり続けている可能性もあるなか、現時点でどのような財政負担の見通しを立てているのか、将来負担をどう捉えているのか、撤退ラインは考えているのか、しっかり考えを示す必要があるでしょう。
ぜひ、市民の不安を取り除き、的確な判断に資するような、具体的で分かりやすい情報の提供に努めていただきたいものです。
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8月28日から、市議会が開会されます。
この市議会の承認後に、旧庁舎跡地の契約を結ぶそうですから、注目です。