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ふるさと納税〜習志野市のリアル〜流出額は10億円

こんにちは、市民オンブズマン習志野事務局です。


少し前に、ふるさと納税の額が5年連続で過去最高を更新したという記事が出ていました。


ふるさと納税に関しては、既にさまざまな問題が指摘されていますが、

  • 2024年度の寄付総額は約1.3兆円で、5年間で2.6倍

  • 利用者は年1千万人を超える

という利用状況で、


先月の朝日新聞の社説では、

 ふるさとを応援する善意の寄付を促すとの大義名分で08年に始まったが、実態はかけ離れている。仲介サイトは商品カタログのようで、返礼品目当ての人が多いのは明白だ。実質2千円の負担で特産品をもらえ、利用枠は高所得者ほど大きい。事実上の節税手段となり、所得再分配と社会の公平を損ねている。  最大の弊害は、寄付先の自治体に残るお金が半分強にすぎない点だ。毎年数千億円の公金が、仲介サイトの運営や返礼品の手配などを手がける関係業者と利用者の利得になって消える。サイト運営業者への支払いは昨年度、寄付額の13%にのぼった。地場産品の振興になる面はあるが、あまりに無駄が大きい。

と、改めて指摘しています。

(社説)ふるさと納税 抜本是正 踏み出すとき - 朝日新聞デジタル2025年8月28日



では、習志野市の実態はどのようなものでしょうか。



日経新聞は、「ふるさと納税のリアル 全市区町村の実質収支マップ」というビジュアルデータを公開しています。

一目でわかる地図を見ると、習志野市は青色となっており、実質収支はマイナスなんだな、とわかります。


ふるさと納税のリアル 日経新聞
ふるさと納税のリアル 日経新聞

こちらのデータを参照して、習志野市の状況をまとめまてみました。

ふるさと納税のリアル 習志野市版まとめ データ参照:日経新聞〜ふるさと納税のリアル
ふるさと納税のリアル 習志野市版まとめ データ参照:日経新聞〜ふるさと納税のリアル


習志野市の住民税流出額は、約10億円


ふるさと納税は、

自分が選んだ自治体に寄付をすることで、自己負担の2000円を超えた分が、所得税の還付や住民税の減額によって戻る制度

ですので、本来、習志野市に入るはずだった住民税が、市外へ流出することになります。


近年の習志野市の住民税流出額は、10億円に達する勢いとなっています。

習志野市 ふるさと納税 住民税流出額
習志野市 ふるさと納税 住民税流出額

ちなみに、10億円がどのくらいかというと、

  • 市内小中学校の給食無償化・・・8億円/年

  • 市内小中学校の給食の唐揚1個だけ問題・・・相当年数解消できる!

  • 水道管の交換・・・5km〜6km分

  • 道路の補修工事・・・40km分

  • 5年間分で小学校1つ建つ

  • 16年分で習志野文化ホール再建設

  • ごみ袋有料化で市の収入となる分・・・10年分

  • 市の職員の賞与込み給与が700万として、142人分

という感じですね。



市に入る寄附額は増えているように見えるけど・・・

一方で、習志野市の寄附受入額は、平成29年以降の9年間で平均すると約2,100万円/年でした。


しかし、寄附の受入額については、特に令和5年以降、増加傾向に見えますが、令和5年度は、個人の大口寄附が2,000万円分(1件)、令和6年度は、習志野文化ホールのパイプオルガンのクラウドファンディングの約8,700万円を含んでいるので、この2年は、特殊だと受け取った方が良さそうです。


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令和5年は、大口個人寄附を除いた残額でも約3,000万円と多めですが、令和6年度は、習志野文化ホールのパイプオルガンのクラウドファンディングを除くと、およそ950万円となります。


習志野市 ふるさと納税 令和6年度内訳
習志野市 ふるさと納税 令和6年度内訳

特殊要因と考えられる上記の個人寄附分とクラファン分を除くと、平均寄附額は1,000万円といったところで、時々、何かしらな要因により、ちょっと増えたりする程度、という方が実態に近そうな気がします。



寄附受入額に対してかかっている経費は、約3割


返礼品などの調達費、送付費、事務費などの経費にかかる合計額の割合は、市が受け入れた寄附額に対し、9年間の平均で24%分でした。


令和6年度分をみてみると、寄附受入額は約9,640万円で、経費は約2,600万円、寄附受入額に対し、27%分の経費がかかっています。


実質的な寄附の受入額(習志野市に入るお金)は、寄附額の約7割相当と見られます。


経費の内訳は、特殊な年を除いた平均で、事務費が53%、返礼品45%(調達費39%・送付費6%)、決済費が2%でした。

習志野市 ふるさと納税の寄附受入に係る経費 :データ参照 日経新聞〜ふるさと納税のリアル
習志野市 ふるさと納税の寄附受入に係る経費 :データ参照 日経新聞〜ふるさと納税のリアル

令和6年度のクラウドファンディングのリターン(返礼品)は、市のHPに名前を掲載するというものですから、調達費はほぼゼロに近いはずですが、寄付額に対する経費の割合は27%となっており、それまでの年とあまり変わりません。


下図は、それぞれの経費額の推移を、内訳別で表したものです。

習志野市 ふるさと納税 経費内訳毎の推移 データ参照:日経新聞〜ふるさと納税のリアル
習志野市 ふるさと納税 経費内訳毎の推移 データ参照:日経新聞〜ふるさと納税のリアル

令和5年度、6年度で事務費が急激に増えています。


  • 2つのふるさと納税ポータルサイトで寄附金の受け入れを開始

  • 最も多かった返礼品が電子チケット

  • ふるさと納税業務委託は、それまで(株)さとふる一択が、もう1社増えた

  • 返礼品対応業務の業務委託が増えた

あたりが要因として影響しているのかな?と推察しますが、R6については、まだ報告書が出ていないため詳細不明なものの、後述する「仲介サイトへの支払い」が85%を占めます。


また、大口寄付のあった令和5年度は、大口寄付を除いても3,000万円ほど寄付がありましたので、それなりに調達費がかかっているとしても、9割がクラファンだった令和6年度は、クラファンで集まった額を除くと1,000万円ほどとなり、前年の1/3ですが、同じくらいの調達費がかかっているようです。


R4

R5

R6

寄附総額(A)

5,360,229

50,005,000

96,440,233

特殊な寄附(B)

20,000,000

86,983,000

通常の寄附(A-B)

5,360,229

30,005,000

9,457,233

返礼品など調達費

1,102,460

7,231,291

7,141,308

事務費

400,268

5,000,173

17,995,735

  • R4の寄付額は約500万円で、R5の通常の寄付は約3,000万円でおよそ6倍、返礼品等の調達費R4は約100万で、R5は約700万なので、およそ7倍で、だいたい比例する。

  • 対してR6は、通常の寄付は約1,000万円でR4の2倍にとどまるのに、返礼品等の調達費は7倍。

  • R5年とR6を比べて、通常の寄附額は1/3になっているのに、調達費は変わらない。



・・・ここはちょっと疑問に感じるところで、どういうカラクリなのか気になります。



ちなみに、R5までの習志野市の返礼品のTOP3はこんな感じです↓

習志野市 ふるさと納税 主な返礼品
習志野市 ふるさと納税 主な返礼品

令和4年以前は、収入に対する経費の割合と、返礼品の経費の割合は相関しているようですが、5年度以降から様子が変わってきている可能性があり、今後は、返礼品の調達の費用だけではなく、その内容やその他費用についても見ていく必要がありそうです。


習志野市 ふるさと納税 経費の割合 日経新聞〜ふるさと納税のリアルより
習志野市 ふるさと納税 経費の割合 日経新聞〜ふるさと納税のリアルより


仲介サイトに支払う費用

総務省は、2024(令和6)年度分から、ふるさと納税に係る経費のうち、仲介サイトの事業者に払った費用について調査を始めました。その結果、2024年度に地方自治体が仲介サイト側に支払った費用は1656億円で、寄付額の13%に上ったそうです。


先述しているとおり、習志野市のふるさと納税に係る経費合計額は、2023(令和5)年から急激に増加しており、

習志野市 ふるさと納税 経費合計額の推移 日経新聞〜ふるさと納税のリアルより
習志野市 ふるさと納税 経費合計額の推移 日経新聞〜ふるさと納税のリアルより

寄附受入に対する経費のうち、仲介サイトにかかる費用は、初の調査である令和6年度分で公表された金額は、約2,230万円でした。

これは、経費の約85%、寄附金額の23%を占め、その具体的内訳については不明です。


朝日新聞の記事によると、

24年度の返礼品の調達や決済、広報、事務などの経費は全自治体で計5,901億円だった。このうち、仲介サイトの事業者には計1,656億円を払っていたことが調査でわかった。寄付額の13.1%、経費の28.1%にあたる。

とのことですから、習志野市がR6年度に仲介サイトに支払った額は、寄附金額の23%に相当することや、経費に占める割合が85%というのは、数字だけをみると、多いんじゃないの?という気はしますね・・。


総務省は、ふるさと納税を実施できる自治体の指定基準を改正し、今年度から、返礼品の調達に100万円以上の費用がかかった場合、返礼品の代金、仲介サイトの利用料、送料などの費目ごとに、支払先、支払い目的などを公表することを義務づけるそうですので、要注目です。



習志野市の実質収支は、2億円のマイナス


日経新聞のデータにある、ふるさと納税の実質収支は、寄附の受入額から経費支出を除た額を算出(実質寄附受入額)し、そこから住民税控除額を引いて、国からの補填金額(地方交付税)を加えて計算します。

日経新聞 ふるさと納税のリアル 実質収支額計算
日経新聞 ふるさと納税のリアル 実質収支額計算

習志野市のふるさと納税の実質収支額は、データにある平成28年以降、ずっとマイナスで、毎年その額は増え続け、平成28年度〜令和6年度の9年間の平均は、ー1億3,600万円/年、累積でー12億2,400万円/9年となっており、直近では毎年約2億円程度のマイナスとなっています。


習志野市 ふるさと納税 実質収支 データ参照:日経新聞〜ふるさと納税のリアル
習志野市 ふるさと納税 実質収支 データ参照:日経新聞〜ふるさと納税のリアル

数字だけをみると、一見、令和4年をピークに実質収支のマイナス額が減っているように見えますが、先述のとおり、令和5年度は大口の個人寄附が、令和6年度はクラウドファンディングがありましたので、実質的には年々、マイナス幅が増えている傾向であると考えられます。


習志野市は、地方交付税の交付団体なので、流出額に対し75%の補填が国からありますが、それを入れてもなお、マイナスを出し続けていて、それは今後も続くだろうと思います。※R5、R6年度の補填金額は約7.5億


ちなみに、習志野市民のふるさと納税の利用者数は、令和7年度控除分で20,272人で、人口の11.5%ですから、逆に言えば88.5%の人はまだ利用していない、利用者数の伸び幅(税の流出可能性)の余地は十分にあるとも言えそうです。



ワンストップ特例制度を使うと、市の負担はさらに大きくなる


確定申告をせずに寄附金控除が受けられるというワンストップ特例制度ですが、実はこの制度を利用すると、市の負担はさらに大きくなるそうです。

確定申告による寄附金控除は、国に納められる所得税と、県と市に納められる市県民税から寄附額分が控除されます。 一方、ワンストップ特例制度による寄附金控除は、県と市に納められる市県民税からのみ寄附額分が控除されます。 つまり、国が負担すべき税の減収分を、県や市に転嫁する制度となっており、ワンストップ特例制度を活用する市民が増えれば増えるほど、市の負担が増えるような仕組みなのです。 豊田市HP もう一度考えませんか?ふるさと納税のこと~ふるさと納税の問題点~より

豊田市HPより
豊田市HPより

習志野市はどうかというと、総務省の令和7年度課税におけるふるさと納税に係る寄附金税額控除の適用状況についてによると、習志野市民でふるさと納税をした20,272人のうち、11,280人の55.6%がワンストップ特例制度を利用しているとのことで、この数も年々増加しています。

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資料を引用した豊田市は、地方交付税不交付団体だそうで、仕組みや問題点をわかりやすく伝えて、市民が考え、判断することができるように発信していますが、習志野市はというと、「みなさんの温かい寄附をお待ちしております」のページしか見つかりませんでした・・・。


習志野市HP ふるさと納税のページ
習志野市HP ふるさと納税のページ

ふるさと納税については、市議会でも何回も取り上げられており、市は、ふるさと納税の返礼品を増やすなど、収入が増える工夫はしているようですが、実態についての市民へ知らせる努力は見えません。


ちなみに、財政力指数が1を上回ると、地方交付税の不交付団体となるとされていますが、R6年度の習志野市は0.883だそうです。



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